建築の外部に対する彫刻的なふるまいとその内部に宿る空間の在り方について。作家性の発露の仕方。middle-scaleの建築。 1 - 3つの形態  建築家の作家性はどこへいってしまったのだろうか。そもそも作家性とは存在可能なものなのか。 2 - 形態iの制作  1つの形態を制作した。制作期間は2025/8/1~2025/8/26の約1か月である。制作時のルールは以下の通りとなる。 ①150mm角の立方体(スタイロフォーム)を初期形態とする。 ②初期形態を任意の形状で切り取る(切断)。 ③切り取った形状を任意の位置で、切断された初期形態に接着する(接続)。 ④「切断」と「接続」を一日に一回行い、25日間行う。 制作の方法  「切断」と「接続」のそれぞれの操作では、形態の終着点を想定していない。終着点どころか、明日の形態さえも先回りして考えない。今、目の前にある形態が、今その瞬間のプロポーションが最も優れていると確信できるように操作を行っている。  これらの操作を一日一回ずつと限定することで、作家の表面的な手癖によって造形を象るのではなく、創造と破壊の連続によって時間を凝縮した造形を生み出す。 形態iのプロセス i 3 - 形態iiの作成  形態iの制作で重要だったのは制作物そのものではなく、その過程である。今その瞬間の制作物と自らの間にはリズムがあった。それは細々とした厳格なプロポーションの見極めから解放された、形態の流動的な流れ、ある形状をどこに位相させるのが自然かというようなリズムである。このリズムを抽象化して形式化することから形態iiの作成は始まった。  この形式化では、本来独立している1日に行われていた「切断」と「接続」の操作を事後的に関係づけ、1つのまとまった操作としてとらえなおし、全25回分の操作を分析した。 形式化の例  全25回の操作の中で、同じ言語でまとめられそうなものはまとめた。その際には、ある操作が全体の印象に何の変化も与えない、確かに「切断」と「接続」は行われているが、なくても形態の全体性に影響を与えなさそうなもの、つまり悪手と言えるようなものもあった。これを省き、まとめると7つの操作が抽出できた。他者と共有可能な操作を自らの中から発見した。6でも15でもよかったのかもしれないが、おそらく7であることに私がやった意味があるように思える。 7つの造形操作 150mm角のスタイロフォームでできた立方体を初期形態として、これら7つの操作を順に1回ずつ行った。操作の順は、初出順に並べている。おそらく最初の方に行った操作は、私の造形思考の癖が強く反映されている。あとになるにつれて偶然的に発見されたものとなり、必然的な操作を偶然的な操作によって、その力を弱めていく、造形操作の質を中立的なバランスに運ぶようにしている。 先行形態a面 先行形態b面 4 - 形態iiiの生成  ここまでに作成した造形はスタイロフォームで構成された中身が密に詰まった塊である。この彫刻的な形態iiから内部空間をもつ建築へと一気に展開させるのではなく、形態iiをもとに形態iiiを生成するフェーズを設定した。つまり、形態iiに建築的な操作を与えることによって、密実につまった彫刻から一定の空間を持つ、彫刻以上建築未満と言えるような何かを作ることが形態iiiのゴールとなった。  ボリュームから何らかのヴォイドを生み出す建築的操作として、OMAのヴォイドの戦略が真っ先に思い浮かんだ。形態iiをヴォイドとしてとらえ、大きな箱型に形態iiの外形をした空間を作るということだ。しかし、この操作は建築のスケールがビッグネスであることを前提としているし、そのまま建築へと展開したときに「形態iiを完全なヴォイドへと変換する」という大きな意図だけが残されてしまう。どのようにして建築を考えたかが一義に定まるのは私としては一番避けたいところなのだ。  まずは形態iiをちょうどすっぽりと覆うような立方体を重ねる。このとき立方体の大きさおよび形態iiとの位置関係はただ一つに定まる。また立方体の中心を固定し、立方体のサイズのみを変化させた。100%,90%,80%・・・となるように。そして結論から言えばもともとの立方体の50%の状態を私は選んだ。選んだ理由は、形態iiを作成した論理が程よく隠されていると感じたからである。つまり直感なわけだが、もう一つ重要な判断基準となった直感があり、それはただ単に50%という数字が適していると思ったことだ。100%がビッグネスなら、ミドルスケールの建築は50%がいいんじゃないかということである。   ヴォイドダイアグラム  そして立方体と形態iiの重なり合った部分をブーリアン操作によってヴォイドにし、これから空間を作り出すための基となる「空」が生成された。  以上のように「形態iiiの生成」の操作はすべて3DCGで行った。それまでのスタイロフォームによる具体的な造形から、CGによるコマンド操作で抽象的に造形をした。それによって立方体と形態iiの取り合いや関係の在り方などが私自身の好みから反れた形で表れているのである。形態i、形態ii、形態iiiの創作レベル、言い換えると作家性は段々と薄められている。その結果、私の作家性が反映されつつもそれが全体を構成する論理として覆いきることはなく、私自身の想像を超えた造形を生み出すことができたのではないだろうか。そしてこれから、造形作家としてではなく建築家としてのフェーズへと進む。 形態iii_a 形態iii_a 5 - 建築へ